「人材版伊藤レポート2.0」とは?要約および概要、本レポートを効率的に読む方法を紹介

人的資本開示

「人材版伊藤レポート2.0を知りたいけど、読む時間がない…」

「人材版伊藤レポート2.0を、わかりやすくまとめてほしい…」

このようなお悩みはありませんか?

本レポートは、国内で重要性が増している「人的資本経営」を実践するための具体的な方法など、非常に有用なレポートです。

ですが、「人材版伊藤レポート2.0」は、全81ページもあり、すべてのページを読むのは難しい方が多く、挫折した方も多いかと思います。

本記事では、「人材版伊藤レポート2.0」について要点を分かりやすくまとめ、本レポートの読み方を解説します。

本レポートを効率的に理解したいと思っている方は、ぜひ参考にしてください。

なお、「人的資本経営」や「人的資本開示」については、以下の記事で詳しく解説しています。

人的資本経営とは?その重要性や背景、取り組み方まで詳しく解説

2023.06.21

人的資本開示とは?具体的な内容や動向、開示のポイント、進め方を解説

2023.06.21

1.「人材版伊藤レポート2.0」とは?

 

「人材版伊藤レポート2.0」とは、2022年5月に経済産業省が「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会」の成果として公表したレポートです。

リモートワークなどの働き方の多様化など、急激な社会の変化に対応するため、非財務情報としての「人的資本」が、実際の経営でも課題としての重みを増してきています。

こうした「人的資本」の重要性を認識するとともに、人的資本経営という変革を、どう具体化し、実践に移していくかを主眼とし、それに有用となるアイディアを提示するものです。

参考:レポート内「図表1:変革の方向性」

人的資本とは

従業員などの人材を、コストではなく、不動産などの有形資本と同様に、適切な投資で価値が高まる存在であると捉える考え方です。

個人が持つ知識、技能、能力、資質等、社員が持つ能力を付加価値を生み出す資本とみなしたものとされることが多いです。

2.「人材版伊藤レポート2.0」の狙い

「人材版伊藤レポート」では、まず、企業・個人を取り巻く環境が大きな変化を迎えていることを踏まえ、今後のアクションの方向性を示しました。

その中で、「人的資本経営」を本当の意味で実現させていくにはどうしたらいいか、について、実行に移すべき取組、その取組を進める上でのポイントや有効となる工夫を示すことを狙いとしています。

「人的資本経営」を進めるには、「経営戦略と連動した人材戦略をどう実践するか」と、「情報をどう可視化し、投資家に伝えていくか」の両輪での取組が重要であるとしています。

これらの推進は、人材面での課題と表裏一体であり、スピーディーな対応が不可欠であり、各社がそれぞれ企業理念や存在意義まで立ち戻り、持続的な企業価値の向上に向け、人材戦略を変革させる必要性があるとしています。

3.「人材版伊藤レポート2.0」を効率的に読む方法

「人材版伊藤レポート2.0」読む時のコツは、まず、「3P・5Fモデル」の各要素とその取り組みの概要を理解し、その後、それぞれ取り組みの詳細を見ることです。

本レポートは、「3P・5Fモデル」に従って構成されており、それぞれの要素での取り組み方を解説しているものとなっています。

さらに、各要素での取り組み方法は、わかりやすいタイトルがつけられており、タイトルを読んでから詳細を確認することで素早く読み解くことができます。

4.人材版伊藤レポートの「3P・5Fモデル」とは

「3P・5Fモデル」とは、経営陣が主導して経営戦略と連動した人材戦略として提唱された3つの視点(Perspectives)と5つの共通要素(Common Factors)のことです。

「人材版伊藤レポート」にとって重要な内容であり、アイディアの引き出しとし、経営陣が人的資本経営へと向かう変革を主導していくための指針として示しています。

参考:レポート内「図表3:人材戦略に求められる3つの視点・5つの共通要素 」

3つの視点(Perspectives)

企業価値の向上につながる人材戦略かどうかを検討する際に、どのような視点からチェックすべきかを示したもの。

  1. 経営戦略と連動しているか
  2. 目指すべきビジネスモデルや経営戦略と現時点での人材や人材戦略との間のギャップを把握できているか
  3. 人材戦略が実行されるプロセスの中で、組織や個人の行動変容を促し、企業文化として定着しているか

5つの共通要素(Common Factors)

企業価値の向上につながる人材戦略のために、どんな企業でも共通して組み込むべき要素を示したものです。

  1. 目指すべきビジネスモデルや経営戦略の実現に向けて、多様な個人が活躍する人材ポートフォリオを構築できているか(「動的な人材ポートフォリオ」)
  2. 個々人の多様性が、対話やイノベーション、事業のアウトプット・アウトカムにつながる環境にあるのか(「知・経験のダイバーシティ&インクルージョン」)
  3. 目指すべき将来と現在との間のスキルギャップを埋めていく(「リスキル・学び直し」)
  4. 多様な個人が主体的、意欲的に取り組めているか(「社員エンゲージメント」)
  5. 時間や場所にとらわれない働き方

それでは詳しく解説します。

(視点1)経営戦略と人材戦略を連動させるための取組

本視点は、「人的資本経営」のスタートとして重要な要素として捉え、推進するための方法などを提唱しています。

経営環境が急速に変化する中で持続的に企業価値を向上させるためには、その実現を支える人材戦略を策定し、実行することが不可欠とされています。

さらに、人材戦略の検討にあたっては、経営陣が主導し、経営戦略とのつながりを意識しながら、重要な人材面の課題について、具体的なアクションや目標を考えることも重要としています。

具体的なアクション

  1. CHRO(Chief Human Resource Officer:最高人事責任者)の設置
  2. 全社的経営課題の抽出
  3. KPIの設定、背景・理由の説明
  4. 人事と事業の両部門の役割分担の検証、人事部門のケイパビリティ向上
  5. サクセッションプランの具体的プログラム化
  6. 指名委員会委員長への社外取締役の登用
  7. 役員報酬への人材に関するKPIの反映

(視点2)「As is – To be ギャップ」の定量把握のための取り組み

本視点では、人材戦略が経営戦略と連動しているかを判断し、人材戦略を見直していく必要性とその方法を提唱しています。

経営戦略実現の障害となる人材面の課題を特定した上で、課題ごとにKPIを用いて、目指すべき姿(To be)の設定と現在の姿(As is)とのギャップの把握を定量的に行うことが重要とするものです。

具体的なアクション

  1. 人事情報基盤の整備
  2. 動的な人材ポートフォリオ計画を踏まえた目標や達成までの期間の設定
  3. 定量把握する項目の一覧化

(視点3)企業文化への定着のための取り組み

本視点では、人材戦略を策定する段階から、目指す企業文化を見据えることが重要とし、その方法を提唱しています。

持続的な企業価値の向上につながる企業文化は、あらかじめ問題として提起されている事柄ではなく、人材戦略の実行を通じて醸成されるものとしています。

具体的なアクション

  1. 企業理念、企業の存在意義、企業文化の定義
  2. 社員の具体的な行動や姿勢への紐付け
  3. CEO・CHROと社員の対話の場の設定

(要素1)動的な人材ポートフォリオ計画の策定と運用

本要素は、現時点の人材やスキルを前提とするのではなく、経営戦略の実現という将来的な目標から必要となる人材の要件を定義し、人材の採用・配置・育成を戦略的に進める方法を提唱しています。

経営戦略の実現には、必要な人材の質と量を充足させ、中長期的に維持することが必要とされています。

この取り組みにおけるアクションは次の4項目です。

具体的なアクション

  1. 将来の事業構想を踏まえた中期的な人材ポートフォリオのギャップ分析
  2. ギャップを踏まえた、平時からの人材の再配置、外部からの獲得
  3. 学生の採用・選考戦略の開示
  4. 博士人材等の専門人材の積極的な採用

(要素2)知・経験のダイバーシティ&インクルージョンのための取組

本要素は、専門性や経験、感性、価値観を持った多様な人材を活かし、企業内すべての従業員が尊重され、個々が能力を発揮して活躍できるようにするための方法を提唱しています。

インクルージョンとは

企業内すべての従業員が尊重され、個々が能力を発揮して活躍できている状態。

中長期的な企業価値向上のためには、非連続的なイノベーションを生み出すことが重要であり、その原動力となるのは、多様な個人の掛け合わせとされています。

具体的なアクション

  1. キャリア採用や外国人の比率・定着・能力発揮のモニタリング
  2. 課長やマネージャーによるマネジメント方針の共有

(要素3)リスキル・学び直しのための取り組み

本要素は、自律的なリスキル・学び直しを促すための方法を提唱しています。

リスキルとは

リスキリングの略で、業務上で必要とされる新しい知識やスキルを学ぶことです。

社員一人一人が自身の過去の経験やスキル、キャリア上の意向、強い意欲をもって取り組める学習領域などを理解するプロセスと、会社がそのプロセスを支援することが重要としています。

具体的なアクション

  1. 組織として不足しているスキル・専門性の特定
  2. 社内外からのキーパーソンの登用、当該キーパーソンによる社内でのスキル伝播
  3. リスキルと処遇や報酬の連動
  4. 社外での学習機会の戦略的提供(サバティカル休暇、留学等)
  5. 社内起業・出向起業等の支援

(要素4)社員エンゲージメントを高めるための取り組み

本要素は、社員がやりがいや働きがいを感じ、主体的に業務に取り組むことができる環境の整備のための方法を提唱しています。

経営戦略の実現に向けて、社員が主体的に業務に取り組み、能力を十分に発揮することが重要としています。

そのために、企業の理念、存在意義及び文化の浸透度合いから、取組と検証を繰り返していくことが期待されます。

具体的なアクション

社員のエンゲージメントレベルの把握
エンゲージメントレベルに応じたストレッチアサインメント
社内のできるだけ広いポジションの公募制化
副業・兼業などの多様な働き方の推進
健康経営への投資と「Well-being」の視点の取り込み

(要素5)時間や場所に捉われない働き方を進めるための取り組み

本要素は、「いつでも、どこでも、働くことができる環境」を整えるための方法を提唱しています。

リモートワークなど働き方に対する人々の意識が多様化する中で、こうした環境を整えることは、事業継続の観点からも必要性が高まっているとされています。

一方で、マネジメントの在り方や、業務プロセスの見直しを含め、組織としてどう対応できるかが重要となってきています。

具体的なアクション

  1. リモートワークを円滑化するための、業務のデジタル化の推進
  2. リアルワークの意義の再定義と、リモートワークとの組み合わせ

人的資本経営は専門家と進めるのがおすすめ

「人材版伊藤レポート2.0」は、少子高齢化と労働人口減少に直面している日本中のどの企業でも、最重要の課題です。

特に本レポートで強く提唱されている「人的資本経営」の推進をしている国内企業は増えており、今後も人材をどう扱うかは、人材の確保、業績の向上にとって必要不可欠です。

一方で、「人的資本経営」はどうやって推進すればいいかわからない、とお悩みではないでしょうか。

MakeCareerでは、「人的資本経営」に関わるISO30414認定資格を保有するコンサルタントを配置し、人的資本開示に関する支援を行っています。

ISO30414に基づいて人的資本開示を行うことで貴社の人的資本への投資の効率化や採用力の向上、そして企業価値向上に貢献します。

この記事の監修者

監修者画像

キャリアコンサルタント

兵庫 直樹

国家資格キャリアコンサルタント。大手外資系ホテル勤務を経て、15年に亘り、マネジメント業務に従事。 その中で人材関連に興味を持ち、キャリアコンサルタントを取得し人材業界へ。その後、持ち前のコミュニケーション能力と資格を生かし、ハローワークにて就業支援に従事してきた異例の経歴!

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