人的資本経営とは?その重要性や背景、取り組み方まで詳しく解説

人的資本開示

「人的資本経営とよく聞くけれども、なんだろう…」

「人的資本経営を推進したいけれども、どんな方法があるんだろうか」

このようなお悩みはありませんか?

少子高齢化の社会の中で、人材の確保や定着率の向上は企業にとって重要なテーマとなっています。

この記事では、人的資本経営とはなにか、関心が高まっている理由や取り組み方など、人的資本経営を進めるためのコツを詳しく紹介します。

人的資本経営をはじめたいと思っている企業の方は、ぜひ参考にしてください。

1.人的資本経営とは?

人的資本経営とは、社員を”コスト”でなく“資本”と考え、その能力や経験を引き出し、中長期的に企業価値の向上へと繋げていく経営手法です。

今までの考え方では、人材はコストの一つとして認識され、コスト削減の一部として、効率的かつ少なくすることが基本となっていました。

その中で、少子高齢化や個人のキャリアに対する考え方の変化など、企業を取り巻く環境は大きな変化を迎え、人材戦略が注目されるようになってきました。

このように、人材の価値を最大限に引き出す経営が人的資本経営の基本的な考え方です。

経済産業省での定義

人的資本経営とは、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方です。

引用:経済産業省│人的資本経営 ~人材の価値を最大限に引き出す~

2.なぜ人的資本経営が注目されるのか

ここでは、人的資本経営が注目される理由について、解説します。

近年急に生まれた経営のあり方であり、多くの企業でこの人的資本経営の考え方が広がっています。

さらに、経済産業省が2020年に発表した「⼈材版伊藤レポート」において、人的資本経営の重要性が強調されたことも要因の一つです。

人材版伊藤レポートについては、以下で詳しく解説していますので、ここでは、わかりやすく注目される背景を解説します。

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2023.06.21

(1)人材の多様化と様々な働き方・キャリア観の広がり

人的資本経営が注目される1つ目の要因は、人材の多様性、多様な働き方の拡大により、人材の確保が重要になっているためです。

少子高齢化による労働人口の減少や国際化が進み、外国人材の雇用やシニア雇用など、様々な人材の登用が重要になってきています。

さらに、特に新型コロナウイルス感染症の広がりにより、リモートワークや副業、転職市場の拡大など働き方も多様化しており、従来の人材管理では難しい局面が増えつつあります。

このような社会の変化から、中長期的な企業の成長にとって、人材の確保・育成は非常に重要になってきています。

(2)投資家からの注目度の高まり

人的資本経営が注目される2つ目の要因は、投資家の間で人的資本の活用についての注目度が高まっているためです。

投資家の間で「有形資産」だけでなく「無形資産」を投資判断の指標として評価する傾向が高まっています。

さらに、ESG投資と呼ばれる、財務状況だけではなく、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)への取り組みが重要であるという考えが広まってきています。

その中で、今まで大きく注目されていなかった人材戦略が企業の将来性を判断するために重要と捉えられ、人的資本経営に関する情報開示を強く求めるようになっています。

特に、上場企業や上場を目指している企業にとっては、「人的資本経営」への取り組みは、企業価値とますます切り離せなくなってしまうことが予想されます。

(3)国際的な重要性の高まり

人的資本経営が注目される3つ目の要因は、人的資本に対する国際的な重要性の高まりのためです。

欧米では人的資本の情報開示が義務化され、2018年には国際標準化機構(ISO)が「ISO30414」として、人的資本に対する情報開示のガイドラインを発表しました。

日本では2022年に初のISO30414認証の取得に成功した企業が出始めておりますが、国際社会の広がりから、国内でも重要度が増すことが予想されます。

「ISO30414」については、以下で詳しく解説しています。

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2023.06.20

(4)デジタル化、AIの進歩

人的資本経営が注目される4つ目の要因は、デジタル化、AIの進歩による人的資本の重要性の高まりのためです。

AIを使ったチャットサービスChatGPTを業務活用する企業が現れるなど、AIによる業務効率化、自動化が進んでいます。

その中で、“人”の付加価値は「さらなるイノベーションを生み出すこと」に変化しつつあり、定型業務ではない高度な人材の確保は重要になってきています。

さらに、DXの推進により産業構造も日々変化しており、企業は将来に向けて挑戦し、変化し続けることを迫られています。

そうした高度な人材の確保・育成は、中長期的な企業の成長にとって不可欠となっています。

3.人的資本経営に取り組むメリット

企業が人的資本経営に取り組むことでのメリットを紹介します。

(1)従業員の能力を可視化できる

人的資本経営に取り組み際に、まずは現状の把握が必要となります。

現状把握では、勤務時間や勤務内容などの定量的な要素を洗い出す機会となり、社員一人一人の状況を把握することが可能です。

その社員がどんなことに関心を持っているか、得意な業務や現状のスキルの洗い出しをすることができます。

さらに、現状把握をすることで、違う担当同士が似たような業務をしているなどの無駄な業務や、人的資本経営に照らし合わせた際に非効率な業務やスキルを知ることもできます。

このように、現状だけでなく、将来的な人材戦略をクリアに把握できます。

(2)社員のパフォーマンスが向上する

人的資本経営に取り組むことで、社員のパフォーマンスの向上が期待できます。

人的資本経営を目指すことで、社員に対して「社員の成長に投資を惜しまない企業」とアピールすることができ、社員のモチベーションアップに繋がるためです。

さらに、社員一人一人が自発的に高いパフォーマンスを発揮してもらう環境を整備することも目的とするため、面談の機会や社員の成長の機会を自然と促す風土が社内でも育ちます。

きっかけは人的資本経営の推進だとしても、現場レベルで不満の解消を図ることができ、中長期的な企業の成長に寄与できるでしょう。

(3)企業ブランドの向上

人的資本経営に取り組むことで、企業ブランドの向上が期待できます。

前述のように、人的資本経営は国際的にも注目度が高まっており、取り組んでいるかどうかは企業イメージに影響を与えます。

特に、グローバル化が進む現代において、外国人材の雇用や海外の企業との取引の機会も増えてきており、人的資本経営を実施していることはアピールの一つになります。

2022年以降、国内でも取得を目指す企業が増えてきており、人的資本経営の有無や、人的資本開示を迫られる場面が増えてくることも予想されます。

必要に迫られた際にスムーズに進めることができますので、まずは現状の把握からなど少しずつでも早めに始めることをおすすめします。

(4)投資家へのアピールにつながる

人的資本経営に取り組むことで、投資家へのアピールが期待できます。

現在、ESG投資など、業績だけでなく社会貢献なども含めた中長期的な企業の活躍を期待されています。

その中で、人的資本経営に積極的に取り組んでいる企業は、社会的価値も高いと評価され、投資対象として認識されやすくなります。

投資額が増えれば、ほかのサービス等への投資を増やすこともでき、人材への投資もさらに充実させることができます。

4.人的資本経営への取り組み方

ここまで人的資本経営の背景やメリットを解説しました。

最後に、実際に人的資本経営にどう取り組んでいけばよいのか、具体的な進め方を説明します。

(1)経営戦略に合わせて目標設定とアクションを検討する

経営戦略との関連性を意識しながら、必要とする人材の確保に向けて具体的なアクションや目標を検討しましょう。

まず、「自社にどのような人材がどのくらいいるのか」「どの部署にどのような人材がいるのか」を把握します。

その後、検討した目標と比べて、「いま自社に足りない人材はどういう人材か」などギャップを把握し、目標を達成するための具体的なアクションを検討します。

「足りない人材を外部から確保するか、または、自社で育てるか」など、ゴールに対してのアクションや目標達成までに必要な期間や費用は変わってきます。

(2)PDCAを回し、施策を効果的に推進する

次に、決まった方針に従って、施策を推進していきます。

特に、人的資本経営は、社内全体でのプロジェクトとなることが多いため、経営陣や管理職が中心となり、社内全体で推進するとよいでしょう。

さらに、施策を実施する際は、PDCAサイクルを回し、施策の状況と改善を常に行っていくことが重要です。

こうした取り組みを継続的に行うためには、データを継続的に収集し、簡単にチェックできる仕組みの構築も重要です。

企業が持つさまざまなデータを分析・見える化できるソフトウェアであるBIツールなどの導入等も検討してみるとよいでしょう。

(3)人的資本経営における情報開示を実施する

人的資本経営を取り組む際は、投資家や採用活動に好影響を与えることが多いため、取り組みの際には情報開示を実施しましょう。

自社のプレスリリースや採用活動で自社での取り組みとして紹介するなど、人的資本経営に対する考え方を公開することで、自社への評価を高めることができます。

人的資本開示の方法については、以下の記事で詳しく解説していますので、ポイントに従って開示するとよいでしょう。

5.人的資本経営のフレームワーク「3P・5Fモデル」とは

「⼈材版伊藤レポート」にて、人的資本経営を本格的に実現するためには「3P・5Fモデル」と呼ばれる人的資本経営のフレームワークが必要、とされています。

引用元:経済産業省│1. 人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書(人材版伊藤レポート2.0)

「3P・5F」を簡単に説明すると、企業価値を高め続ける人材戦略に必要となる「3つの視点(Perspectives)」と、どんな企業でも共通して戦略に組み込むべき「5つの要素( Factors)」を示した人材戦略の枠組みです。

ぜひこちらのフレームワークを参考に、人的資本経営を推進しましょう。

「人材版伊藤レポート2.0」とは?要約および概要、本レポートを効率的に読む方法を紹介

2023.06.21

まとめ

人的資本経営は、企業の継続的な発展のために欠かせない取り組みとなってきています。

特に、少子高齢化と労働人口減少に直面している日本中のどの企業でも、最重要の課題です。

一方で、「人的資本経営をどうやって推進すればいいかわからない」とお悩みではないでしょうか。

MakeCareerでは、ISO30414認定資格を保有するコンサルタントを配置し、人的資本開示に関する支援を行っています。

ISO30414に基づいて人的資本開示を行うことで貴社の人的資本への投資の効率化や採用力の向上、そして企業価値向上に貢献します。

人的資本経営について関心をお持ちの方はお気軽にご連絡ください。

この記事の監修者

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キャリアコンサルタント

兵庫 直樹

国家資格キャリアコンサルタント。大手外資系ホテル勤務を経て、15年に亘り、マネジメント業務に従事。 その中で人材関連に興味を持ち、キャリアコンサルタントを取得し人材業界へ。その後、持ち前のコミュニケーション能力と資格を生かし、ハローワークにて就業支援に従事してきた異例の経歴!

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